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Book Review and note

2019-08-01から1ヶ月間の記事一覧

無我説を論証する。『倶舎 ~絶ゆることなき法の流れ~ 』(編集、龍谷大学文学部教授 青原令知)

5世紀頃のインドの大学僧、ヴァスバンドゥが著した『阿毘達磨倶舎論』の「破我品」は、仏教の無我説に基づいて、外教の実我説などを論破し、有情の諸現象を説明する。ヴァスバンドゥはのちに唯識思想の論書を著すが、その前段階の思想を知ることができる。 …

最初期の仏教における無我説は、”所有観念の放棄”という極めて実践的なものであった。『倶舎 ~絶ゆることなき法の流れ~ 』(編集、龍谷大学文学部教授 青原令知)

無我説の展開は「所有観念の放棄」「非我」「無我」の三段階となる。 最初に、「無我説」とは、「四法印」(諸行無常・諸法無我・一切皆苦・涅槃寂静)ひとつにあたる。無我説が依るものは「縁起説」である。縁起説とは、すなわち、諸法は諸因縁の集合・集積…

インド仏教が目指した修行道の到達目標はどこにあるのか?『倶舎 ~絶ゆることなき法の流れ~ 』(龍谷大学)

5世紀頃のインドの大学僧、ヴァスバンドゥが著した『阿毘達磨倶舎論』(倶舎論)には、修行道すなわち仏教実践がまとめられている。この修行道の内容は、現代人の日常からかけ離れた、かなり高度なレベルであるから、実際に到達するには難しい点も含まれる…

チベット仏教の「ゲルク派」。ダライ・ラマ法王も属するこの最大宗派は、14世紀後半になって現れたツォンカパという宗教的天才が立宗した。

ゲルク派は、ツォンカパの独創的な哲学。 ■ツォンカパの出現 ツォンカパ(1357-1419)はアムド地方で生まれ、16歳で中央チベットに向かい、密教、般若、中観、唯識、論理学などを学んだ。カダム派やサキャ派の寺を訪れてはディベートを行い、無敵の強さでそ…

文章は「書く」ではなく「描く」もの。自分が伝えたいことをしっかりと文章で伝えるための文章術、『マジで文章書けないんだけど』(前田安正著)

文章を「書く」とは、物事を客観的に観察して、それを基にストーリーを「描く」もの。 そもそも人間とは、ある「状況」から「行動」をおこして「変化」する。そして文章とは、人間の思考にそって書かれるものだから、「状況」「行動」「変化」が入り混じるも…

AI技術による産業革新のなか「人生100年時代」をどう生きるのか。その“道しるべ”となるのが『インプット大全』だ。

AI時代と人生100年時代がやってくる ■いま、AI技術による産業革新が加速している まずは<合成頭脳>。典型例ではグーグルやフェイスブック、アマゾンなどで、膨大なデータの集積・分析により、巨大なサービスを作り上げる。つぎに<労働機械>。機械の知…